併願戦略の立て方と受験スケジュール
併願戦略はなぜ重要か
小学校受験では、多くの家庭が複数の学校を受験します。中学受験や大学受験と比べて合格の基準が見えにくく、学校との「相性」や「ご縁」が大きく影響するため、1校だけに絞るのはリスクが高いと言えます。一般的には3〜5校程度を併願するケースが多く、首都圏の私立小学校の平均受験校数は3.8校というデータもあります。
併願校は「第一志望(本命校)」「実力相応校」「確実校(安全校)」をバランスよく組み合わせることが基本戦略です。ただし、数を増やしすぎると願書作成に追われ、各校の対策も中途半端になります。「最大でも5校まで」が一つの目安です。
志望校の優先順位の付け方
志望校の優先順位は、以下の5つの観点を総合的に検討して決めましょう。単に「偏差値が高いから」「有名だから」ではなく、お子様と学校の相性を最も重視することが大切です。
- •教育方針との一致度:学校の教育理念が家庭の教育観と合っているか。宗教教育の有無、自由度の高さ、規律の厳しさなどを確認する
- •お子様との相性:学校見学や説明会でのお子様の反応が重要な判断材料。「この学校に行きたい!」と自然に感じる学校が理想
- •通学の利便性:毎日の通学は6年間続く。片道60分以内が一般的な目安。電車の乗り換え回数、混雑度、安全性も考慮する
- •進路の選択肢:中学以降の進路(エスカレーター式内部進学か、中学受験の選択肢を残すか)を長期的視点で検討する
- •家庭の経済状況:学費(年間80〜150万円)+寄付金(初年度10〜100万円の「お願い」がある学校も)+行事費+交通費の6年間総額を試算する
首都圏の小学校受験スケジュール全体像
首都圏の小学校受験は、地域によって時期が異なります。この時期のずれを利用して併願を組み立てるのが戦略の基本です。以下が年間の大まかな流れです。
- •4〜6月:学校説明会・公開授業の開始。各校のパンフレット収集、見学予約。この時期に志望校の絞り込みを始める
- •7〜8月:夏期講習で集中対策。塾の模擬試験(模試)で志望校の合格可能性を確認。願書の下書きも開始
- •9月:埼玉県の私立小学校が入試開始(さとえ学園小学校、星野学園小学校など)。首都圏で最も早い入試で、本番の雰囲気を体験できるため「前受け」として受験する家庭も多い
- •10月上旬〜中旬:神奈川県の私立小学校が入試開始(慶應義塾横浜初等部、精華小学校、洗足学園小学校など)
- •10月下旬〜11月上旬:東京都の私立小学校の入試ピーク。11月1日に多くの難関校が集中(慶應義塾幼稚舎、早稲田実業学校初等部、暁星小学校、雙葉小学校、白百合学園小学校など)
- •11月中旬〜12月:国立小学校の入試(筑波大学附属小学校は12月中旬、お茶の水女子大学附属小学校は11月下旬)
併願パターンの具体例
家庭の状況や志望校のレベルに応じた代表的な併願パターンをご紹介します。あくまで参考例ですので、ご家庭の事情に合わせてアレンジしてください。
- •パターンA(堅実型・3校):第一志望の私立+実力相応の私立+国立。受験料と対策の負担を最小限に抑えつつ、チャンスは確保。費用目安:受験料6〜7万円
- •パターンB(標準型・4校):挑戦校+第一志望+実力相応校+確実校。段階的に手応えを確認でき、精神的にも安定しやすい。費用目安:受験料8〜12万円
- •パターンC(万全型・5校):埼玉の前受け+第一志望+同レベル校+確実校+国立。9月の前受けで本番経験を積み、本番に自信を持って臨める。費用目安:受験料10〜15万円
- •パターンD(こだわり型・2校):第一志望の私立+国立のみ。第一志望への想いが強く、ダメなら公立でOKという覚悟がある家庭向け。費用目安:受験料2〜3万円
- •パターンE(国立志望型・2〜3校):国立2校+私立1校(または国立のみ)。学費を抑えたい家庭。国立は抽選があるので不合格でも納得しやすい
11月1日問題(東京の試験日集中)
東京都の多くの私立小学校が11月1日に一斉に試験を実施します。慶應義塾幼稚舎、早稲田実業学校初等部、暁星小学校、雙葉小学校、白百合学園小学校、聖心女子学院初等科など、人気校の試験日が重なるため、この中から1校しか受験できません。これが「11月1日問題」と呼ばれる悩みです。
11月1日にどの学校を受験するかは、併願戦略の最大のポイントです。11月2日以降にも試験日がある学校(学習院初等科、成蹊小学校、立教小学校など)を組み合わせることで、選択肢を広げることができます。ただし、慶應幼稚舎のように複数日にわたって試験を行う学校もあるため、2日目・3日目に他校を受験できるかの確認も必要です。
願書作成と出願の注意点
- •願書は学校ごとに内容を書き分ける:志望理由は各校の教育方針に合わせた内容にする。使い回しは校風との不一致が見抜かれる
- •写真撮影は早めに:家族写真を求められる学校もある。9月上旬までに撮影スタジオで撮影しておくと安心
- •出願方法の確認:Web出願、窓口持参、郵送など学校によって異なる。出願開始日・時間を事前に確認し、余裕を持って準備する
- •受験料の支払い:1校あたり20,000〜30,000円。5校受ければ10〜15万円になる。支払い方法(クレジットカード、銀行振込、コンビニ払いなど)も要確認
- •住民票・戸籍関係書類:提出を求める学校も。発行に時間がかかる場合があるので早めに準備
試験日が連日になる場合の対策
- •子どもの体力を最優先:連日受験は年長児にとって大きな負担。2日連続までが限度と考え、3日連続は極力避ける
- •移動時間を考慮する:前日の試験会場と翌日の会場が離れている場合、移動疲れも考慮に入れる
- •リフレッシュの時間を確保する:試験後はゆっくり過ごせるよう予定を空けておく。好きな遊びやおやつでリラックスさせる
- •親のメンタルケアも重要:不合格が続くと親が動揺し、子どもに影響する。合否に関わらず「よく頑張ったね」と声をかけ続ける
- •前泊の検討:試験会場が遠い場合、前泊して万全の体調で臨むことも選択肢。ホテルの予約は早めに
合格発表と入学手続きの注意点
合格発表のタイミングと入学手続きの締め切りは学校によって異なります。複数校に合格した場合、入学金の振り込み期限が重なることがあり、第一志望の結果が出る前に確実校の入学金(20〜50万円)を払う必要があるケースもあります。この「入学金の重複払い」は覚悟しておきましょう。入学辞退した学校から入学金が返還されることは基本的にありません。
スケジュール管理の実践方法
- •Googleカレンダーやスプレッドシートで一覧管理:説明会日程、出願期間、試験日、合格発表日、入学手続き締め切りを色分けして管理
- •夫婦で共有する:仕事の休み調整が必要な場合も多い。早めに上司に伝えておくと安心
- •リマインダーを設定する:出願開始日や各種締め切りの1週間前・前日にリマインダーを設定
- •受験日のタイムテーブルを作る:集合時間から逆算して起床時間、食事時間、出発時間を決める
- •「不合格時の行動計画」も事前に決めておく:全滅した場合は公立に進むのか、2月以降の追加募集を狙うのか、家族で事前に話し合う