小学校受験とは?まず知っておきたい基本
小学校受験とは
小学校受験とは、私立・国立の小学校に入学するための選抜試験を受けることです。公立小学校は住所に基づく学区制で、原則として希望すれば誰でも入学できますが、私立・国立小学校は各校独自の入学試験を実施し、合格した子どもだけが入学を許可されます。首都圏では毎年約5万人の年長児のうち、約1割にあたる5,000人前後が小学校受験に挑戦しているといわれています。東京都内だけでも私立小学校は約50校、国立小学校は6校(筑波大学附属小学校、お茶の水女子大学附属小学校、東京学芸大学附属4校)があり、それぞれ独自の教育理念と入試方法を持っています。試験は毎年10月下旬から12月にかけて行われ、ペーパーテスト、行動観察、運動テスト、面接などの組み合わせで選抜が行われます。
小学校受験の現在のトレンド
近年の小学校受験は大きな変化を遂げています。従来はペーパーテスト重視の学校が主流でしたが、現在は行動観察や体験型テストを重視する学校が増加しています。慶應義塾幼稚舎や早稲田実業学校初等部など伝統校の人気は依然として高い一方、新設校や共学化した学校も注目を集めています。また、共働き家庭の増加に伴い、アフタースクール(放課後預かり)の充実度が学校選びの重要な判断基準になってきました。洗足学園小学校や東京農業大学稲花小学校など、アフタースクールが充実した学校への志願者が増加傾向にあります。さらにコロナ禍以降、ICT教育やオンライン対応力も保護者の関心事となり、タブレット端末を全児童に配布する学校も増えています。
受験のメリット
- •質の高い教育環境:1クラス20〜30人の少人数制が一般的で、担任の他に副担任やネイティブ英語教師が配置される学校も多い。独自のカリキュラムによる探究型学習やプロジェクト型学習が充実している
- •一貫教育の安心感:慶應義塾幼稚舎、学習院初等科、青山学院初等部など多くの私立小学校は中学・高校・大学までの一貫教育を提供しており、中学受験や高校受験の負担を軽減できる。内部進学率は学校によるが、80〜100%程度
- •価値観の合うコミュニティ:教育方針に共感する家庭が集まるため、保護者同士の価値観が近く、子ども同士も似た環境で育った友人と6年間を過ごせる
- •充実した施設と安全対策:温水プール、天然芝のグラウンド、最新のICT機器が揃い、登下校時のICタグによる見守りシステムやスクールバスの運行など安全面も手厚い
- •多様な体験機会:林間学校、臨海学校、海外研修、本物に触れる芸術鑑賞など、公立では実現しにくい体験プログラムが豊富に用意されている
受験のデメリット・注意点
- •経済的負担が大きい:受験準備費用として年間100万〜230万円、入学後も年間90万〜150万円の学費がかかる。6年間の学費総額は500万〜900万円にのぼり、世帯年収1,000万円以上が一つの目安とされる
- •時間的・精神的な負担:年中〜年長の1〜2年間、塾通い、模試、学校見学、願書作成、面接練習など親子ともに多大な時間と労力を費やす必要がある
- •合格の不確実性:人気校の倍率は3〜10倍以上にもなり、十分に準備しても不合格になる可能性がある。国立小学校は抽選があるため、実力だけでは合否が決まらない
- •通学の負担:私立小学校は学区外にあることが多く、片道30分〜1時間以上の通学が6年間続く。満員電車での通学は低学年の子どもにとって大きな負担になりうる
- •子どもへの心理的影響:幼い時期に「受かる・落ちる」という経験をすることへの不安。ただし、適切なサポートがあれば受験準備自体が子どもの成長につながるケースも多い
- •多様性の制限:経済的に似た層の家庭が集まるため、多様な背景を持つ子どもと触れ合う機会が限られる面がある
私立小学校の特徴
私立小学校は、各学校が独自の建学の精神に基づいた教育を行っています。宗教系(カトリック系の雙葉小学校、暁星小学校、プロテスタント系の青山学院初等部、立教小学校など)、大学附属系(慶應義塾幼稚舎、早稲田実業学校初等部、学習院初等科など)、独立系(洗足学園小学校、桐朋学園小学校など)に大きく分けられます。学費は学校によって異なりますが、初年度納入金は100万〜150万円程度、2年目以降は年間約90万円が平均的です。入学試験は10月下旬〜11月に集中しており、ペーパーテスト、行動観察、運動テスト、面接(親子面接・保護者面接)を組み合わせた選抜が行われます。受験料は1校あたり2万〜3万円で、3〜5校を併願するのが一般的です。
国立小学校の特徴
国立小学校は、国立大学法人の附属校として教育研究を目的に設置されています。東京には筑波大学附属小学校、お茶の水女子大学附属小学校、東京学芸大学附属の4校(竹早・大泉・小金井・世田谷)があります。学費は公立とほぼ同等で非常に安く、受験料もわずか2,000〜3,000円です。ただし、研究校としての性格上、教育実習生の授業が多い、カリキュラムが実験的である、PTA活動や保護者参加の行事が多いなどの特徴があります。選抜方法は学校によって異なりますが、多くの国立小学校では「一次抽選→考査(試験)→二次抽選」という3段階の選抜を行うため、実力だけでは合否が決まりません。倍率は20〜50倍にもなる学校もあり、ある意味で最も狭き門といえます。
試験の種類と内容
- •ペーパーテスト:数量、図形、言語、常識、推理などの分野から出題される。問題は先生が口頭で読み上げ、子どもが絵に丸をつけたり線を引いたりして回答する形式。慶應義塾幼稚舎はペーパーテストを実施しない
- •行動観察:5〜10人のグループで共同作業やゲームを行い、協調性、コミュニケーション力、社会性などを評価する。近年最も重視される傾向にある試験
- •運動テスト:模倣体操、ケンパー、ボール投げ、なわとび、平均台など。運動能力だけでなく、指示を聞く力や取り組む姿勢も評価される
- •面接:親子面接、保護者のみの面接、子どものみの面接がある。志望理由、家庭の教育方針、子どもの日常生活などについて質問される
- •制作・絵画:はさみやのりを使った工作、課題画、自由画など。巧緻性と創造性が評価される
受験に向いている家庭・子ども
小学校受験は「子どもの試験」であると同時に「家庭の試験」でもあります。受験に向いている家庭としては、夫婦の教育方針が一致していること、経済的に6年間以上の学費を無理なく支払えること、子どもの成長を長い目で見守れること、受験の結果にかかわらず子どもの自己肯定感を守れることなどが挙げられます。子ども自身については、好奇心が旺盛で物事に集中できる、基本的な生活習慣が身についている、人の話を聞ける、他の子どもと協力して活動できる、といった点が大切です。ただし、これらは受験準備を通じて育てていくこともできますので、現時点で全てが備わっている必要はありません。
受験を決める前に考えたいこと
- •なぜ小学校受験をしたいのか、夫婦で率直に話し合う。「周りがやっているから」という理由だけでは、2年間の準備を乗り越えるモチベーションが持てない
- •家計のシミュレーションを行う。受験準備費用だけでなく、入学後の学費、きょうだいの進学費用まで含めた長期的な資金計画を立てる
- •通学圏内にどんな学校があるか調べる。片道の通学時間が60分以内を目安に、候補校をリストアップする
- •子どもの性格や発達段階を客観的に見る。受験準備を楽しめそうか、ストレスになりそうかを見極める
- •不合格だった場合のプランBを考えておく。地元の公立小学校の情報も同時に集めておくと安心
受験のスケジュール全体像
小学校受験の一般的なスケジュールは、年中の春頃から本格的な準備を開始し、年長の秋に試験本番を迎えるという約1年半〜2年のサイクルです。4月〜6月に学校説明会が集中し、6月〜8月に願書を準備、9月〜10月に出願、10月下旬〜12月に試験という流れが一般的です。国立小学校は11月下旬〜12月に試験が行われることが多く、私立の結果を見てから国立に挑戦するパターンも可能です。準備の開始時期は年中の秋(10月〜11月)が最も多く、年少から始める「じっくり型」と年長の春から始める「短期集中型」のご家庭もあります。
まずは情報収集から始めましょう
小学校受験を考え始めたら、まずは近隣の私立・国立小学校について調べてみましょう。各学校の公式ウェブサイトを確認し、学校説明会の日程をチェックすることから始められます。説明会は年中の4月〜6月に多く開催され、予約が必要な学校がほとんどです。人気校は公開と同時に定員が埋まることもあるため、早めにスケジュールを確認しておくことをおすすめします。また、受験情報サイトや書籍で全体像を把握したり、すでに受験を経験した先輩保護者の体験談を聞いたりすることも大変参考になります。焦る必要はありません。ご家庭のペースで、お子様に合った選択をしていきましょう。大切なのは「正しい選択」をすることではなく、「ご家庭にとって納得のいく選択」をすることです。